その他・キーモッド

開発途中にコンセプトがグダグダになった不遇な機体が好き

これは大人の事情で悲しい運命を辿った機体のお話

機体名キーモッド

元々は潜水艦や艦艇の破壊を目的として開発されていた水中専用機

下の画像はコンセプト通りに完成していた場合のキーモッド

胴体に20発の魚雷を搭載可能

腕の水冷式ビーム砲は両腕合わせて20発撃てる

ビーム兵装はとても高価で宇宙戦用機体以外では採用されづらいが

高価な小型ビーム発生器を使わなくていいよう、腕はビーム砲の武器腕化

冷却に海水を利用して冷却機構を簡素化させてコストを抑え

開発予算内でビーム砲の搭載にこぎつけた




ビーム砲の威力減衰を可能な限り減らすために

腕のビーム砲は艦艇の船底に密着して撃つ事を想定しており

その威力は艦艇を一撃で沈める破壊力を有している



また、胴体を換装すれば多様な任務を遂行できる

直前に切り離し敵軍港へ突撃させる特攻胴体

電子機器を搭載した情報収集に適した胴体

輸送に特化した胴体など

目的によって胴体を換装してあらゆる任務に対応する予定だった




開発の進捗率が50%に差し掛かった頃…事態は一変する


営業「えっ水中機ではなく陸戦機が欲しい…?では現プロジェクトを中止して新規の…」

顧客「違う違う!新規じゃなくて仕様変更!水中用を陸戦用にするだけでいいから!」

  「あっ追加の資金は無しで納期はそのままね!」


_____クライアントからの無慈悲な仕様変更である

納期と開発資金的に1からやり直しは不可能であった

完成していた胴体はそのまま流用、残った資材から脚部をなんとか製造したが

携わった者は不眠不休の仕事二毛作(ねるひまなしのデスマーチ)と相成った



辛うじて機体を組み上げたものの問題が発生する

コクピットの座席の向きが…パイロットが真上を向いた状態だったのだ

上半身と下半身の接続しているシリンダーを延長し

限界まで前に可動させて上半身を前へ倒す事で強引に解決したが

装甲材が足りずシリンダーが剥き出し状態に


結果、キーモッドは

並のEXM用ライフルでは貫通出来ないほどの堅牢さと

シリンダーを攻撃されると歩兵用対物ライフルの弾1発で撃破される脆弱性を

併せ持つ奇妙な機体となってしまった


・・・・・・

工員「こいつ…シリンダー攻撃されたら下手すりゃ歩兵の携行武装でもやられますよ…」

工場長「敵に背を向けなきゃ問題ねえさ」

工員「動きがニブいから簡単に背後取られますって…」

工場長「‥‥だなぁ」


色々問題はあるものの、機体は組み上がったのでクライアントへ納品

・・・

しばらくしてクライアントがキーモッドの性能試験を実施

間髪入れず開発会社にクレームが舞い込んだ

・両腕のビーム砲が1発撃つと焼き付いて使用不能になる *(腕のビーム砲は水冷式)

・移動速度が鈍足すぎる、なぜスラスターが付いていないのか?

工員「やっぱりクレーム来ましたね」

工場長「そりゃ水中機を無理やり陸戦機にしたからな、来て当然だ」


問題点を理解していた開発部はすでに改善に着手していた

一旦納品する事で改善する為の時間を稼いでいたのだ

腕部ビーム砲のOH問題には

腕に外付けの冷却液を装着、ビームを3発まで撃てるようになった

移動速度の問題はバイクユニットを頭部に装備させ、移動速度の遅さをカバーした



ただし予算をオーバーしていたので上記の冷却液とバイクユニットは

オプション品扱いで別途費用を請求するかたちとした


ちなみにこのバイクユニット、使用すると少し困った事になる

・・・コクピットの向きが上下逆になるのだ

この問題を現場のパイロットは___

変形中に体勢を逆にするという力技で解決した



癖の強いキーモッドを使いこなし多大な戦果を上げたパイロットも存在した


そのパイロットは

脚部にスラスターを増設しバイク形態の速度を上げ

冷却液のタンク容量を増やしビームの発射数を6発(両腕だと12発)撃てるように改造

拠点強襲機体として運用していたようだ


これはそのキーモッドの戦闘記録である

遮蔽物に身を隠そうとも腕部ビーム砲は遮蔽物ごと敵機を貫き破壊する


建物が密集するエリアにて待ち伏せにあうが・・・

急停止とバイク形態解除を同時に行い、敵機の斬撃を躱しつつ反撃

敵機を撃退する




キーモッドはビーム兵装を持つ数少ない陸戦機体であり

乗りこなすことが出来れば防衛に徹する敵陣を崩す

強力な強襲機だったのだが___


___操縦性がピーキーすぎて乗りこなせるパイロットが殆どおらず

初期生産分で製造中止となった