とあるフリー傭兵のお話


俺は民間軍事会社「オアシス」から依頼を斡旋してもらってる傭兵だ

18の頃に傭兵になって早6年…ついに掴んだ大仕事を

華麗に全うした俺の元には大金が転がり込んできた

この大金を見たら…相棒は俺を羨ましがるだろうな!グフフ


相棒とは昔からの腐れ縁で18の頃に俺が傭兵になると言ったら___

◇相棒「マジかー じゃあ俺も傭兵やるわ」

ってすげー軽いノリで一緒に傭兵をやることになったんだよなぁ

それから今に至るまで 何度も命を預けあった俺の大切な戦友だ


可哀そうだから相棒には後で豪華な飯でも奢ってやるかー!

報酬を受け取った俺がルンルン気分で事務所に戻ると…

___相棒には彼女ができていた



俺が大仕事で事務所をしばらく留守にしていた時…

彼女が助けを求めて事務所に駆け込んできて…

後を追って侵入してきた悪漢を相棒がぶちのめし…

それから彼女がお礼にと飯を作りに事務所に来るようになり

何日も過ごしている間に行為…じゃない…よな?

好意が芽生えて‥‥付き合うことになったそうだ



___俺はたった一人で大仕事を達成して大金を手にした

相棒は一銭にもならない人助け…タダ働き

俺の方が幸せのはずだ…それなのに…この‥‥気持ちは…

う”ら”や”ま”し”い”い”い”!

俺はッ!素敵な!恋を!逃した!!!

ア”ア”ア”ァ”ァ”!!!!!!!!!

心の中で俺は叫んだ



機体改造に大金をつぎ込んでも 俺の心は満たされない

俺の心に空いた穴を埋められるのは…鉄や油じゃない…

ぬくもり…かわいい女の子っ!

ロマンスの神様……出会いを…俺に素敵な…出会いをください…っ!


‥‥‥‥祈っただけで願いが叶う訳ないよな

すべてが嫌になってベットでふて寝していると

カチャカチャトントンと食器同士が当たったような音が聞こえてきた


無線機が変な電波を受信したのか?

・・・あ~っ!やかましい!


しかし起き上がる気力も無かった俺は

無線機を切らずにそのまま雑音を聞いていると

ふと…ある違和感に気づく


このリズム…妙に規則的じゃないか?

‥‥もしかしてこれは____モールス信号?!

枕の下に置いてある日記から白紙のページを破り

俺は発信されているモールス信号を書き留めた

・・・SOS ノーヴェン 中央銀行 囚われている SOS・・・



ノーヴェン___確か1年以上前の戦闘で廃墟になった町の名前だ

今じゃ傭兵崩れの悪党共がたむろしてるヤべえ町って噂の…

普段の俺なら…こんな怪しい謎の救援要請なんて無視していただろう

だが今の俺にはこれが神様がくれた機会(フラグ)に思えた


ロマンスの神様ー--!ありがとー---!!!俺行くよッ!

俺は整備屋に連絡を入れつつ運び屋へ向かった


ー運び屋・事務所ー

今すぐノーヴェン市があった場所へ俺の機体を運んでくれ!

◆運び屋「ドアのプレートが見えねえのか?今日は休みだ」

料金は通常の倍払う‥‥それとコイツもな

◆運び屋「それはっ!…エヘヘどこでも飛ばさせてもらいますよ旦那ぁ…」

やっぱアル中には酒だな!話が早くて助かる!


ー整備屋・格納庫ー

◆整備屋「ご注文通り仕上げましたが…もうこんな短時間じゃ仕事受けませんからね」

ごめん…で俺の無敵の楯(ソードブレイカー)の仕上がりはどんな感じ?

不完全じゃないよね?

◆整備屋「完全です」

◆整備屋「右腕の専用ガトリングガンの弾は徹甲弾、予備弾倉は2つは

脚部装甲にマウントしてます」

◆整備屋「左腕の速射バズーカは通常の物と比べて弾速が3.5倍ほど早いため」

◆整備屋「それに合わせて偏差射撃の設定を変更しています」

◆整備屋「予備弾倉は左腕シールドの裏側に3つ」

◆整備屋「装甲は稼働重量ギリギリまで積みましたので鈍亀です」

◆整備屋「直線移動だけならローラーダッシュは可能ですが、

ダッシュ中に旋回すると脚部の関節が破損するのでご注意を」


いい仕事だ整備屋!これなら軍隊とだってやりあえるぜ!


ーノーヴェン市より数百キロ上空ー

そろそろノーヴェン市に到着…運び屋ーあそこって確か

1年以上前に町が戦場になってからは誰も住んでいないゴーストタウンで

今はそこに悪党が住み着いてるんだっけ?

◆運び屋「おう、今のノーヴェン市は強盗団の根城になってるぞ」

◆運び屋「この前上空飛んでたらミサイル撃ってきやがってな、危うく死ぬところだった」

あーだからこんな低空を飛んでるのねー

それじゃそろそろ地上から行った方がいいな…運び屋!ここで降ろしてくれ

◆運び屋「お前のそのデブ機体じゃ日が暮れちまうぜ!急いでるんだろ?

俺に任せろ!ガハハ!」


◆強盗1「おい!見ろ!輸送機が突っ込んでくるぞ!?」

◆強盗2「ヒャッハー!カモがネギ背負って飛んできた!!!」

◆強盗3「信号弾だ!早く撃て!総出で狩んぞ!」

何勝手に町に突入してんだ運び屋ー!酔ってんのかテメー!

◆運び屋「HAHAHA!男は度胸ってなー!(カシュ)」

よ…酔ってやがる…っ!

◆運び屋「じゃあな傭兵ー頑張れよー!」


こうなったらやることは一つ・・・やられる前にやる!

俺の無敵の楯(ソードブレイカー)にそんな豆鉄砲は通用しないんだよ!

◆強盗1「あの野郎硬てえ?!おい!誰かバズーカ!バズーカ持ってこい!」


◆強盗4「タイミング合わせ!…今!!」

◆強盗5「吹き飛びやがれェ!」

◆強盗5「ヒャッホウ!直撃だ!」

◆強盗6「やったか?!」



その程度で墜ちるほどヤワじゃないんだよ!

無敵の楯(ソードブレイカー)は!


敵がひるんだ隙にガトリングの弾倉を交換っと


敵を順調に撃破しているのにも関わらず 俺は焦っていた

想定よりも遥かに敵が多い…

強盗団ってのはせいぜい機体が5機か…多くても10機程度のはずだ

…現時点で18機は墜としてる

なのに‥‥

増援増援また増援…

ノーヴェンじゃ機体は畑から採れるのか?!

このままじゃ弾薬が‥‥



◆強盗頭「敵は1機だ!攻め続けろ!とどめを刺した奴には300万だ!」

◆強盗26「ヒヒヒ!300万は俺のもんだぁ!」

…装甲破損度60%‥‥弾数残り20%‥‥これまでか・・・

キラキラな恋をしてから死にたかったな‥‥

‥‥‥‥最後に好きな歌でも歌って…地獄に行くか


__戦場そいつは葬式場

  線香代わりに中指立てて

  弾薬くべて荼毘に付す

  参列死神大笑い

  戦場そいつは葬式場

  傭兵どもの葬式場___




◇?「俺は2番より1番の方が好きだわーその歌」

?! 相棒!?相棒じゃないか!?なんでここに?!

◇相棒「運び屋のおっさんが連絡くれたんだよ 馬鹿が一人で踊ってるってさ」

◇相棒「俺も混ぜろよ  一人で踊っててもつまらないだろ?」

へへっ…もちろん大歓迎だ!

キメていこうぜ相棒!


◇相棒「__戦場そいつは晴れ舞台」

◇相棒「鋼の機体を着こなして」

◇相棒「弾丸躱して舞い踊る」

◆強盗31「そっちへ行ったぞ!」

◆強盗32「さぁ来い…ハチの巣にしてやる」

◆強盗32「来たァ!」



◇相棒「観客死神大熱狂」

◇相棒「戦場そいつは晴れ舞台」

◇相棒「傭兵どもの晴れ舞台___やっぱあの歌と言えば1番だなー」


鼻歌交じりによくもまぁ…あんな機動できるもんだ

___俺も負けてられねえ

全弾撃ち尽くすまで暴れてやるぞォ!

◆強盗頭「おい!陣形を乱すな!まずあの鈍亀を堕とせ!

‥‥くそっ聞こえないのか?!」

◆強盗頭「っっ!撤退だ!信号弾を打て!」




相棒の参戦により形勢は逆転、強盗団は散り散りに逃走した

・・・・・・

ふーっ助かったぜ相棒!

◇相棒「いいってことよー というかさ…なんでこんな無茶をやらかしたの?」

あっそうだ早く銀行に行かないと!

相棒に事情を説明しながら俺は急いで銀行へ向かった


銀行に入った俺たちは慎重に部屋を一つ一つ調べていったが中には誰一人おらず

とうとう調べていない部屋は一番奥の部屋だけになった


ハンドサインで俺が先に突入するから援護頼む と相棒に伝え

俺はドアを蹴破り部屋へ突入した

助けに来たぜお嬢さん!______

____え?・・・誰このおっさん・・・

◇相棒「wwwwwww.o゚(^∀^)゚o.。ジーパン青過ぎ!」




その後…事務所に戻った俺たちは腹が減ったので

助けたおっさんを連れてラーメンを食いに出かけた

相棒はおっさんと気が合ったのか…食い終わった頃には完全に打ち解けていた

前を歩く浮かれたバカコンビ(相棒とおっさん)を見ながら

俺は今日の出来事を振り返る



神様に俺の祈りは通じず彼女は出来なかった…けどまぁ…

俺も相棒も・・・なんか知らんおっさんも・・・生きている


色々あったけど 結果オーライ!良しとするか!

その後…俺は前を歩く相棒とおっさんと共に朝まで遊んで過ごしたのだった

とあるフリー傭兵のお話 ー完ー 



◆◆◆◆




ーノーヴェン中央銀行・夕暮れ時ー


◆???「”例の物”は?」

◆?「建物の中はもぬけの殻です”例の物”も確認できません」

◆??「協力者がいたのでしょうか」

◆???「…あの強盗団には資金を提供して戦力を強化させていた」

◆???「並の戦力では突破できない程にな」


◆??「では協力者は‥‥バイロン軍という事でしょうか?」

◆??「あるいは連合軍の対立派閥による犯行…」

◆???「バイロンであろうとなかろうと 結果は同じだ」

◆???「”奴”を始末して”例の物”を奪還する」



傭兵のあずかり知らぬところで事態は着実に動いていた

これは どこにでもいるただの傭兵が歩んだ

奇想天外な物語の___その始まり